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江藤 純哉 Jyunya Eto

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プロフィール

生年月日 1999年2月13日
出身 福岡県福岡市出身
成績
  • 2017年 第10回世界ジュニア&カデット・U-21大会 -84㌔級日本代表
    愛媛国体 成年男子組手重力級5位
  • 2018年 天皇杯皇后杯 第46回全日本空手道選手権大会 個人組手3位
  • 2019年 第9回東アジア空手道選手権大会 個人・団体組手優勝
    第63回全日本大学空手道選手権大会 団体組手2位
  • 2022年 KARATE1 シリーズAカイロ大会 2位
  • 2023年 KARATE1 シリーズAアテネ大会 優勝
    KARATE1 プレミアリーグ福岡大会 3位

2023.12.27

自分で自分を磨き、世界王者を目指す

空手の男子組手で次世代のエースとして名乗りを上げた江藤純哉(大分市消防局)。高校まで無名だった空手家は大学入学を機に「自分の殻を破り」、日本代表のナショナルチームに名を連ねるようになる。戦うステージが世界となり、昨年から世界のトップ32人で争う「KARATE1プレミアリーグ」の出場資格を得てジャンプアップした。見据える先に「世界チャンピオン」があり、いま大きく羽ばたこうとしている。

 

海外に挑戦して1年余り。男子組手84㌔級の江藤純哉は、2022年から積極的に国際大会に出場するようになった。世界最高峰の「KARATE1プレミアリーグ」に出場できるのは世界ランキング32位まで。江藤はその下のカテゴリーとなる「KARATE1シリーズA」で経験を積み、地道に世界ランクを上げてきた。自費での挑戦で、息詰まることもあったが、全ては「世界チャンピオンになる」ためだった。

2023年1月の「KARATE1シリーズAアテネ大会」では、3大会出場による参加ボーナスポイントを得て、さらに優勝したことで、自己最高となる世界ランキング9位にランクインした。同年6月の「KARATE1プレミアリーグ福岡大会」では、地元・福岡県の大声援を受けて魂の戦いを見せる。3位決定戦では一時リードを許すも、得意の中段蹴りで逆転し勝利。世界に江藤純哉の名を知らしめた。

空手との出合いは小学2年の頃。近所に空手道場があり、仲良しの友達が通っていたことから習い始めた。母が中学まで空手をしていたこと、父方の祖父が剣道の師範をしていたことなどもあり、周囲には「スポーツより武道」という雰囲気があったという。道場は寺の中にあり、砂利の上での外稽古は異色だったが、「とにかく楽しかった」と述懐する。小学6年時に一度だけ全国大会に出場したことがあるが、中学、高校は伸び悩んだ。実力がなかったわけではない。高校3年間、団体戦のメンバーに選ばれ、全国高校総体(インターハイ)にも出場した。ただ、個人戦では成績が出せずに苦しんだ。「結果が出ないから悩み、悩む過ぎると動きにキレがなくなる。悪循環に陥り抜け出せなかった」。それでも、同級生が部活を引退する中、「大学で花を咲かせたい」と卒業まで練習を続けた。

努力が実ったのは近畿大学に入学した直後だった。自主性を重んじる大学の練習は、人によっては怠惰を生み出す。しかし江藤は「まだまだ自分は上を目指せると思っていたし、殻を破りたかった」と、周りに流されることはなかった。日本代表の選考会で結果を出すと、大学でも試合メンバーに入るようになり、大きな大会に出られるようになった。「練習環境や生活環境も大きく変わった。同級生や一つ下の後輩にはインターハイのチャンピオンがいたが、不安より、その中で自分がどれだけできるか楽しみだった」。練習の成果が結果につながるようになった。この頃から、階級を今の84㌔級に上げるために増量に取り組んだ。当たり負けしないパワーを身につけ、武器であるスピードを落とさないように、練習後に坂道ダッシュを繰り返した。また、外国人選手対策として、「(相手は)身体能力が高く、リーチの長さで勝てないので、技を出すタイミングを考えるようになった」。駆け引きを覚え、戦い方の幅が広がった。

 

大学卒業後は憧れの西山走(大分市消防局)を追って、大分市に移り住んだ。「大学1年の時の全日本選手権で西山先輩が優勝して、それを見た時にかっこいいと思った。西山先輩は卒業後に実業団に入らず、消防士として働きながら第一線で空手を続けていることを知った」。江藤と西山に接点はない。大学は異なり、形と組手では種目も違う。それでも空手家として憧れ、連絡を取るようになる。大学4年時に就職活動をしようと思っていた頃に、「西山先輩から連絡が来て、『大分市消防局の試験にスポーツ推薦がある。採用されれば空手もできるから考えてみれば』と言われ、すぐに受験することを決めた」。

今は西山と同じく消防士をしながら、空いた時間に空手道場に通う。大学の頃に比べ練習時間は半減し、練習相手もいなければ、組手を専門とする指導者もいない。練習環境は決していいとは言えないが、「これから先は教えてもらうのではなく、自分で自分を磨く」。西山が師事する佐藤重徳師範(大分県空手道連盟会長)から形の体の使い方を学び、自分なりに組手の動きに変換する。江藤は「基礎基本を徹底することで、空手の本質を高めることができている」という。考えることで自分を客観視できるようになり、冷静に試合を組み立てることができるようになった。

江藤にとって強さとは、「諦めないこと」だという。「僕は今まで日本一にも世界一にもなっていないので、挑戦し続けたい。負けても立ち上がり、勝利を求める。一番上に立った時に満足するのか、まだまだ上を目指そうと思うのか、想像がつかない。今言えるのは空手が好きということ。だからこそ勝ちたい」。世界最高峰のリーグに参戦しても金銭的な優遇はそこまでない。毎大会、手出しはあるが、「お金ではない。世界一に挑戦する経験は、いつか生きる。幸い奥さんも家族も応援してくれている。『世界一になってほしい』という、僕と同じ夢を持ってくれている限り、諦めたくない」。諦めの悪い男の挑戦はまだまだ続く。