再インタビュー

江村 美咲 Misaki Emura

2023.2.24

「日本人女子初」を量産した２０２２年、次の目標は五輪での金

万全を尽くした東京五輪では、個人で３回戦敗退。団体で５位に入賞したが、思うような結果を出せず、一時は燃え尽き症候群に陥っていた。転機が訪れたのは日本代表のコーチ陣が一新されてから。自分の殻を破り、新たなスタイルを構築した２０２２年は、江村美咲の飛躍の年となった。女子サーブルワールドカップ・チュニジア大会、世界選手権カイロ大会と、続けて日本人女子初となる優勝を飾り、日に日に注目度が増した。パリ五輪では金メダルの最有力候補となった今、大きなプレッシャーと向き合っている。

―東京五輪に出場して、変化はありましたか？

東京五輪はできること全ての準備をしたし、パフォーマンスを出し切ったのですが、それでも望んだ結果は出ませんでした。何が足りなかったのだろうと分からなくなって、悩んでいた時期がありました。そんな時に日本代表のコーチがフランス人のジェローム（・グース）に代わって、ヨーロッパの戦術や考え方、技術的なことも学んでいくうちに、まだ私が知らなかったことがいっぱいあったのだと思いました。東京五輪直後は「自分にまだ伸びしろがあるのかな」と思っていたのですが、今は「まだまだある」と思えるようになりました。

―コーチが代わって一番影響を受けたことは？

ステップの細かさなど、技術的なことはいろいろ変わりました。今までは自分のフェンシングの型にとらわれていて、その型から外れてはいけないと思っていたのですが、「その日その時、相手によっても決まる技は変わってくる。同じ戦い方を貫くのが良いわけではない」と言われて、自分の型に固執することなく殻を破ってみたら、それが結果につながりました。

―長年培ったスタイルを変える怖さはなかったのですか？

全てを変えるのではなく、付け足していく感じでした。今までのフットワークの強みやスピードを生かしつつ、そこに足りないものを加えてくれたので受け入れやすかったです。

―それがワールドカップ初優勝、そして世界選手権での初優勝につながったのですか？

はい、そうです。どちらも日本人女子では初めてのことだったのでうれしかったですが、まだまだ通過点だという気持ちはあります。

―サーブル女子の第一人者として日本代表を引っ張るプレッシャーは感じますか？

引っ張っているつもりはないです。日本は今、私だけでなくて、みんなのレベルが本当に上がっています。たまたま自分が初めて優勝しただけです。

―とはいえ江村選手への注目度が日に日に増しています。どのように受け止めていますか？

自分ではあまり自覚がなくて、ワールドカップと世界選手権で優勝が続いたときも、日本でどのくらい注目されていたのか実感が湧きませんでした。ただ、国内試合では負けられないという変なプレッシャーはありました。

―パリ五輪までに必要なのはメンタル？ それとも技術？

どちらも点数にして80点くらいは安定して出せるようになってはいます。完璧は難しいと思いますが、ミスや気持ちが乱れることを減らすことができればいいと思うので、メンタルも技術の向上も必要です。

―4年に一度の五輪に照準を合わせるのは難しい？

私はまだ１回しか経験してないので何とも言えませんが、後悔しないように、絶対に相手に気持ちでは負けないことをすごく意識してきました。日々の練習で少しも妥協せず、自分が納得できるまで練習を積み重ね、やり残したことはないと思えるぐらい追い込んで五輪の舞台に立ちました。思うような結果は出せなかったけど、試合には迷わず挑めたので、またそれをやっていくしかないのかなって思います。

―今後の目標は？

4月からオリンピックの選考レースが始まります。今年の目標は「安定して表彰台に立てる選手になること」だったのですが、少しずつ実現できています。ただ、これは継続できなければ意味がないし、今後も目標は変わらず安定して表彰台に立つこととなります。そして、パリ五輪では個人と団体の両方で金メダルを取りたい。今のビジョンにある最後のゴールはそこですね。その先は全く考えてないです。