剣道

竹下 洋平 Yohei Takeshita

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終わりなき剣の道。強さを求め、着実に歩を進める

剣の道を極めようと一心不乱に竹刀を振り続ける竹下洋平。大分県警察機動隊の剣道特別訓練員として、数々の大会で優秀な成績を収めている。独特の打ち気、打ち間を持ち、遠間からの多彩な打突(だとつ)を持つ竹下選手は、世界選手権大会の日本代表メンバーにも名を連ねた実力者だ。その攻撃力は現剣道界でもトップクラスといわれ、「勝ちにこだわる剣道を見せたい。勝負に徹し、自分のスタイルを研ぎ澄ませ、深みを出したい」と牙を研ぐ。

 

コンマ数秒で決着がつく世界

2012年に大分県警察機動隊の剣道特別訓練員になってから着実に力をつけた。「剣道に集中できる環境となり、より自分の剣道に向き合い、結果を求めるようになった」。落ち着いた口調の中で、わずかに言葉が熱を帯びる。 「一足一刀の間」もしくは「遠間」から相手を揺さぶり、流れを自分に引き寄せながら、ある一瞬を待つ。相手が踏み込んできたその時こそが、絶好の機会だ。電光石火で竹刀を振り下ろし「面」を打つ。一本が決まるまではコンマ数秒の世界だ。「大きな舞台で自分の考えた技、構成をぶつけたときに、僅差であるがそこで勝ち星を取れたときに剣道の醍醐味を感じる」。

 

竹下が脚光を浴びたのは14年の全国警察剣道選手権大会。無名の新人が次々と強豪をなぎ倒し、一気に準優勝まで駆け上がった。「技量の差はまだあったけど、あの大会で自信がついた。強い相手と対戦して剣道に対する姿勢や考え方を学べた」。“本域”の選手と剣を交わしたことで、これまで以上に稽古に熱が入った。翌年の全日本剣道選手権大会で3位となってからは、全日本入賞の常連となり安定した強さを示した。 18年には日本代表に選出され、同年の世界剣道選手権大会の団体戦で優勝に貢献。竹下は「日本が剣道で負けるはずがないという雰囲気の中で、これまでに感じたことのないプレッシャーがあった。やっている側からすると実力は僅差だったし、これまでと全く違う戦い方をしてくる相手に戸惑うものがあった」と振り返る。押し合いが目立つパワー剣道で、「とにかく空いたところに打ってくる」海外の多様な剣風と接し、日本剣道が求める「気剣体の一致」と「残心」を改めて意識するようになる。

 

強いと思ったことはない

竹下が剣道をはじめたのは5歳の頃。父と兄が剣道をしていた影響で道場に通うようになる。「礼儀の正しいスポーツだな」と思ったのが第一印象。竹刀の持ち方や振り方、構え方など習得する難しさはあったが、一瞬で勝負が決まる剣道の面白さと厳しさを知ったのが、初めて試合をした小学3年生の頃。「1回戦で10秒足らずで負けた。悔しさと情けなさもあったけど、ようやく試合ができるうれしさを覚えている」。黒星スタートのデビュー戦だったが、負けたことで勝つために必要なことを考えるようになった。「剣道は相対する競技。感覚を大事にしながら、相手のスタイルを見極め、分析し、自分の技を仕掛ける必要がある。身体能力が高ければ自分のスタイルを押し切ることはできるが、自分にはそれはない。テンポを少しずらすだけで自分の得意な間合いになることを覚えた」。

 

中学、高校と続けるうちに、「素振りを見て、その選手のレベルが分かるようになった」。また、一瞬で勝負が決する剣道において「実力がある人が必ず勝つわけではない。そのときの精神状態、集中力で大番狂わせを起こすことができる」と知る。高校2年の国体で団体3位と実績を残し、大学は大学剣道界の名門・明治大学に進学する。「高校までは指導者に管理してもらったが、大学は自分で考えないと伸びない。これまでにない厳しい稽古で自分の限界に挑戦できた」と4年間の積み重ねが、血となり肉となる。開花するまでは時間を要したが、努力は報われた。

 

日本を代表する剣士となった今、「強いと思ったことはない」と言い切る。自分に足りないところを分析して、「稽古の量が足りない。筋力、技術、知識が足りないと気づく」。遠回りをしても一つひとつの弱点を潰し、コツコツと努力を積み重ねる。「できないことができ、剣道の幅が広がったときに喜びを感じる」。竹下の当面の目標は、「国内大会で頂点に立ったことがない。弱さを感じている。まだまだ強くならないといけない」と日本一を目指すが、「終わりがないのが剣道」と語る男にとって、日本一も通過点のひとつに過ぎない。

竹下洋平の哲学

一つひとつの弱点を潰し、コツコツと努力を積み重ねる。

 

プロフィール

生年月日 1988年7月19日
出身 大分県 大分市
身長 177cm
体重 84kg
成績
  • 2018年 第17回世界剣道選手権大会 団体優勝
  • 2018年 第66回全日本剣道選手権大会 3位
  • 2019年 第67回全日本剣道選手権大会 3位