2021.01.07
自分自身と戦い、目標を撃ち抜く
大分県警察初の女性機動隊員として県民を守る財津美加。高校時代はボートで全国大会上位入賞するなど活躍した。警察官になってからはオールを拳銃に持ち替え、今は競技用ピストルを手にする。練習では調子が良くても試合で実力を出しきれない時期もあったが、ライフル射撃は「メンタルのスポーツ」と意識するようになってから結果が出るようになった。リオデジャネイロ五輪に出場した警察官選手を見て、目標が定まった。東京五輪、パリ五輪では「出場するだけでなくメダルを狙う」と照準を合わせている。
コツコツ努力して才能を開花
幼少期から活発で、おままごとより外で遊ぶことが好きな子どもだった。「体を動かすことが好きだったので運動部に入りたかった」と中学でバドミントン部、高校ではボート部に入部する。バドミントンは日の目を見ることはなかったが、ボート部で才能が開花。ボートの強豪校である日田高校で、「全国大会に出るのは当たり前。全国で入賞してからが勝負という感じだった。周りの意識が高く、練習はキツかったけど精神的に強くなった」と振り返る。コツコツと真面目に努力できる財津は、ボートとの相性が良かった。体力も技術も練習すればするほど伸び、スピードへと変換した。高校ボートの全国3大大会である全国選抜大会、インターハイ、国体のそれぞれで入賞した。当時、指導を受けた監督の言葉が今も座右の銘となっている。「ツラいときこそ笑顔で」。つまづいた時に思い出し、苦難を乗り越えた。
高校卒業後は警察官の道を選び、ボート競技から離れた。業務に追われる忙しい毎日を過ごしていた頃、拳銃の訓練で才能を見出され、拳銃の特別訓練員に選ばれる。「当時は高校時代にボートで鍛えた筋力だけが武器だった。他の警察官と比べても秀でたものはなく、なぜ私?という疑問しかなかった」と振り返る。周囲のレベルが高く、不甲斐なさを感じた財津は、コツコツと努力。才能を開花させたのは特別訓練員になって2年後。全国警察射撃競技大会で優勝し、ボートでも経験できなかった日本一になる。
日本一の射撃手が競技用のピストルを手にしたのは23歳の時。「国体を目指してみないか」と誘われて、「チーム大分の一員として恩返しをしたい」と快く返事をしたが、拳銃と競技用のエアピストル、スポーツピストルは似て非なるもの。「道具も的の距離も違う。全く当たらなかった」。その難しさに頭を抱えたが、「面白さの方が大きかった」。ライフル競技について調べると、第1回アテネ五輪から正式種目として実施され、世界で広く競技されていることを知る。また、メンタルが重要なスポーツであることを知り、「この競技を極めたい」と火がついた。
不安に打ち克ち、競技に打ち込む
練習の鬼と化した財津はメキメキと実力をつけ、頭角を現す。ライフル射撃を始めて1、2年で急成長を遂げ、オリンピックも射程圏内に入る選手までになった。「これまでオリンピックなんて頭になかったけど、リオデジャネイロ・オリンピックで警察官が出ているのを見て、周りの選手はオリンピックを目指して競技を続けていることを知った。意識するようになった」。しかし、目標を高く設定したことで気負い過ぎたのか、ある程度のレベルに達してから点数が伸びない。「練習では当たるが、試合になると得点が出ない」。初めての挫折とスランプ。解決の糸口をつかめない日々を送っていた時に出会ったのが、礒部直樹だった。今なお現役選手であり、日本代表のスタッフでもある礒部の言葉に救われた。「得点が伸びない時期があるのはみんな通る道。それぞれがそれぞれの解決策を見つけて進んでいる」と言われて気持ちが楽になった。苦難を乗り越えれば成長できる。これこそがメンタルのスポーツだと実感し、「自分には何が足りないのか自問自答した」。模索しながら練習を続けた。
長いトンネルを抜けたのは2019年の全日本ライフル射撃競技選手権大会。この大会で3位に入らなければ東京五輪の選考大会の出場権を失うというプレッシャーがかかる場面で「不安に打ち克った」。極限まで集中力を高め、維持し、ライバルと戦うのではなく、自分自身と戦えたという。結果は僅差で準優勝となったが、飛躍への手応えをつかんだ。その後の大会では自分の望まない成績が続いたが、もがき苦しんだ時期を経て、自らの心と体に向き合い競技に打ち込む術を知った。練習が点ではなく、線にできている実感がある。「いよいよこれから」だ。そんな好循環の成果を披露する場が日本代表チームの選考会となる。ここで成績を残せば、日の丸を背負って海外の大会への扉が拓かれる。「東京五輪、パリ五輪は出場するだけでなくメダルを狙う」と照準を合わせている。
財津美加の哲学
ツラいときこそ笑顔で
プロフィール
生年月日 | 1992年5月24日 |
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出身 | 大分県 日田市 |
身長 | 163cm |
成績 |
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