ウェイトリフティング

後藤 大雅 Taiga Goto

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強い意志でけがを乗り越え、結果を生み出す

後藤大雅は幾度にわたるけがに苦しみながらも、そのたびに成長してきた。「どんな状況に置かれても、今の自分に何が足りないかを考え、どうすれば結果を出せるかを考えてきた」。困難に陥れば陥るほど燃えた。それは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、次々と大会が中止となり、多くの選手がモチベーションを保てずにいたなかでも、高い目的意識を持って練習に取り組んだ。「今までも、これからも変わらない」と自分のスタンスを貫き、目の前の大会に向けて全力を尽くす。

 

肉体的な苦痛を乗り越え、精神力をつくり上げる

今年4月から約半年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大学での練習ができず、リモート授業が続いたため、母校の大分工業高校ウエイトリフティング部の練習場で後輩と汗を流す日々が続いた。後藤の他にも母校で練習するO Bもいた。「初心に帰ることができたし、いい刺激を受けた」と話す。

2014年の高校入学を機にウエイトリフティングを始めた。きっかけは土居雅典監督(現・国東高校)の強い推薦だった。「中学3年の時に兄を通じて会ったときに、『お前の筋肉はウエイトリフティングに向いている。ウチでやってみないか』と言われた。何かしたいことがあったわけでもない。体を鍛えられるならやってみようと軽い気持ちだった」

 

もっとも、すぐにのめり込んだ。練習すればするほど体つきが変わり、数値で結果が現れることに面白さを感じた。「自分の成長が目で見て分かる」。ウエイトリフティングを始めて2年後には全国高校選抜大会に出場し、3年時には全国高校総体(インターハイ)で準優勝、国体で3位と結果を残した。周囲は喜んでくれたが、後藤自身は結果に満足することはなかった。「インターハイも国体もけがをして100%と思えなかった。まだまだ(重いウエイトを)上げられるとの思いの方が強かった」。後藤というアスリートが日本トップレベルで戦い続けている理由のひとつに、「どんな素晴らしい結果にも決して満足しない」ことが挙げられる。

大会が終われば過去のもの。いい結果が出て周囲に褒められても、自分は納得いかない部分に目がいく。技術でも精神面でも、もっと上を目指せる。好結果が出ても自分を見失うことはなかった。「前進するためには、もっと自分はできると言い聞かせて練習に励むしかない。これでいいと思ったら競技を辞めていたと思う」

 

高校3年間はストイックに競技と向き合い、誰よりも練習した自負があった。中央大学に進学したときも、それなりの経歴と自信を持って入部した。全国トップクラスが集まる強豪校のレベルの高さに驚いたが、それ以上に練習量にショックを受けた。「自分より能力の高い選手が過信することなく、自分を追い詰め、朝から晩まで練習する姿に圧倒された」。以来、一日も休むことなく練習すると自らに課した。しかし、高校時代から苦しめられていた手首の痛みは、ウエイトリフティングの選手にとってつきものであったが、後藤のそれは限界を超えていた。指先までに痛みが走り、箸を持つこともままならない日もあった。

「それでもみんなが練習しているので休むことなんて考えられなかった。バーベルを持てない日はスクワットなど下半身を鍛え、痛みが引けば通常の練習をし、また痛めれば下半身を強化する」。どれだけ痛みに耐えられるかがテーマとなった。耐えられれば自信になっていくし、充実感も生まれる。肉体的な苦痛を乗り越えられることが精神力をつくり上げる一つの手段となった。「人一倍練習して、強い精神力をつくり上げたいと思った」

 

強い意志で日本一を目指す

ウエイトリフティングとは、バーベルを持ち上げ、その重さを競うスポーツだ。種目には「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」の2つがあり、それぞれ試技を3回ずつ行い、各種目の最高記録で順位が決まる。後藤の強さを聞くと「リズムやテンポのよさ」である、という答えが返ってくる。後藤自身も「ペースを守り、自分の体と向き合い、直感を信じて競技に臨む」と話す。リズムやテンポは強い意志や精神力から生まれる。何があっても動じない強い意志があるからこそ、プレッシャーを受ける場面になってもいつも一定のリズムで試技ができる。高い技術を持つトップレベルでは、高度な駆け引きがあり、いかに平常心を保ち毎回同じリズムで試技ができるかどうかで勝敗を分ける。後藤は窮地に立たされたときに、たびたび奇跡的な力を見せ、全日本選手権大会や国体など自ら狙いにいった試合で底力を見せた。

 

2019年は3月の全日本ジュニア選手権大会での準優勝を皮切りに、毎月全国レベルの大会に出場し、好成績を残した。そこでの実績が買われ、同年8月の国際大会のブルースワードカップに日本代表として出場した。初めての国際大会でメダルこそ逃したが4位となり、確かな手応えを得て帰国。その後もけがと向き合いながらも調整し、大学4年間の集大成となる今年の大会で、これまで成し遂げられなかった日本一を目指すはずだったが、コロナの影響で続々と大会中止が決まった。それでも後藤はモチベーションを落とさず、日本一を意識して日々を過ごす。「日本一になるために強い肉体と絶対に折れることのない意志を持つこと。どんな困難があっても屈することのない自分でありたい」。大学を卒業するまで半年を切り、日本一になるチャンスがどれほどあるか分からない。それでも後藤はこの瞬間にも己の肉体と対話し、向き合っている。

後藤大雅の哲学

絶対に折れることのない意志を持つ

 

プロフィール

生年月日 1999年3月3日
出身 大分市
身長/体重 168cm/65kg
成績
  • 2019年 全日本ジュニア選手権 準優勝
    ブルースワードカップ 4位