トライアスロン

新田 城二 Joji Nitta

09
 

2019.10.30

自分の速度で着実にステップアップ

水泳からトライアスロンに競技転向して4年目。新田城二は我が道をゆく。水泳(スイム)・自転車(バイク)・ランニング(ラン)の三つの競技を連続して行う過酷なスポーツは、肉体に与える負荷は計り知れない。しかし、新田は三つの競技を淡々とこなす。「得意不得意がないのが僕の特徴」と自身が語るように、バランス型である新田に突出した武器はないが、どの種目も高水準にこなすことができる。物静かで優しい好青年は、「ルーティン化するのが大事。寝て、起きて、食べることと同じように、僕の中では泳いで、こいで、走るのは同じようなもの」と涼しげに話す。新田にとってトライアスロンは日常なのだ。

 

自分のゴールを目指す

物心ついたときには水泳をしていた。「3歳ぐらいのときに始めたので自分の意志ではない。親の勧めだったと思う。幼い頃から運動が好きで、泳ぐことも走ることも好きだった」。小学2年で水泳は習い事ではなく、競技とする選手コースに移った。種目は個人メドレー。ここでも自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの4種目をそつなくこなす。小・中学では県内のレースで上位のタイムを残し、高校3年時には全国高校総体と国体に出場した。

 

高校で水泳をやめようと考えていたが、優れた筋力や心肺機能を評価され、長距離種目でオリンピック選手や日本ランキング上位の選手を数多く輩出した鹿屋体育大学に進学する。最高の練習環境で日本一を夢見た新田だが、「周りは速い選手ばかりで結果を残していたが、僕は緩やかな成長だった」と挫折を味わう。それでも腐ることなく練習する。寓話のウサギとカメで種別するならカメである新田は心得ている。ウサギがカメに負けたのは油断して昼寝をしたからではなく、ウサギはカメを見て走り、カメはゴールを見て走ったからだ。ならば「目の前の相手ではなく、自分のゴールを見て走ろう」と決めた。苦しみに遭遇しても決して逃げない心を持ち合わせた者だけがゴールを許されるトライアスロンに出合うのは、それから4年後となる。

 

挑戦こそ成長の糧

新田に転機が訪れたのは大学院のときだった。日本オリンピック委員会が競技団体と連携し、2020年の東京五輪に向けてトップ選手の競技転向を促す「競技間トランスファー」の第1回となるトライアスロンの記録会に出場した。スイム400㍍、ラン5㌔に臨み、合計の設定タイムを突破できなかったが、水泳では記録が伸びず、全国大会に届かないと悩んでいた新田は、「新たな競技に挑戦しよう」と思えた。もともと長距離走には自信があったし、高校時代は自転車で毎日10㌔の距離を通学していた。泳いで、こいで、走ることは新田にとって日常だった。

 

「自分の知らない世界がある。そこに挑戦する自分を想像するだけでワクワクした」。ここからスイマーではなく、トライアスリートとしてのキャリアをスタートさせた新田は肉体改造を施す。

「専門的なことを言えばエネルギー供給系が全然違う。水泳は無酸素系だが、トライアスロンは持久系、体力アップが必要。ランは体重が軽いと速く進むが、脂肪が減るとスイムは遅くなるし、バイクのペダリングのパワーも弱くなる。3種目がうまく機能する体を作るのは難しいけれど、それが楽しかった」 指導者はいない。水泳で学んだ知識をフル稼働。陸上や自転車を専門競技とする選手や指導者にアドバイスを受け、大会に出場してはベテラン選手にトレーニング方法を学び、練習メニューを考えた。初めて出場したトライアスロン大会では、トランジション(スイムからバイク、バイクからランへと競技種目を転換すること)の方法も分からずタイムロスが多かったが、トライ&エラーを繰り返し、記録を伸ばしている。

 

地元でトライアスロンの伝道師になる

スイムとランは他に引けを取らない。課題は経験の浅いバイクでタイムを伸ばすことだ。  「海とプールは違うがスイムは自信がある。スイムからバイクに転換し、落ち着くまでに集団が形成される。そこで先頭にいるのか、後続にいるのかで大きく順位が変わる。なんとかバイクで離されないように先行逃げ切りの形を作りたい」 苦手だったバイクも膨大な練習量でタイムを短縮し、苦手意識を克服した。今でも自転車を操るテクニックを磨くことに余念はない。

2018年、大分県が独自に行っているトップアスリート就職支援の取り組み「アスナビ・チーム大分プロジェクト」により、地元での就職が決まった。社会医療法人関愛会・佐賀関病院に勤務しながら、「生まれ育った故郷で成長したい。肉体の限界に挑戦し、東京の次のパリ五輪、ロサンゼルス五輪を目指したい。」と話す。また、もう一つの目標も明確だ。「トライアスロンは生涯スポーツ。僕は一人でも多くの方にトライアスロンの魅力を伝えていきたい。それが僕にできる大分への恩返しだと思う」

新田城二の哲学

自分自身の成長を止めない

 

プロフィール

生年月日 1994年3月16日
出身 大分市
身長/体重 172cm/60kg
成績
  • 2017年 虹の松原トライアスロン大会/3位
  • 2018年 ASTCトライアスロンアジアカップ/19位
  • 2019年 天草宝島国際トライアスロン大会/優勝
    CAMTRIトライアスロンアメリカカップ/13位
    JTU男子スーパースプリント特別大会/13位
    第74回国民体育大会 いきいき茨城ゆめ国体2019/11位
  • 2021年 日本トライアスロン選手権/25位
  • 2022年 天草宝島国際トライアスロン大会/3位
  • 2023年 アジアトライアスロンカップ(香港)/26位